2008年から小学校でも英語教育が始まりました。
この本はそれより少し古い2004年に発行されたものですが、とても面白かったので紹介したいと思います。
英語に興味がある人はもちろん、そうでない人も読み物として純粋に楽しめると思います。
文法軽視の「英会話ごっこ」でよいのか?
義務教育で何年間も勉強したのに、ほとんどの日本人は英語が出来ません。
日本の英語教育は「読み書きはできるようになっても、聞けないし話せない」といわれ続け、近年は「読む書く」より、「聞く話す」が重視されつつあります。
この本が書かれた2004年から8年経った今(2022年)も、その傾向は続いています。
例として、当時のある中学校1年生用の教科書の1節を挙げています。
Demi: Two hamburgers and two colas, please.
店員: Large or small?
Demi: Large, please.
店員: For here or to go?
Demi: For here.
店員: Here you are. That’s five hundred and forty yen, please.
ハンバーガー屋でのやり取りです。(円建てで支払うという事には目をつぶってください。)
この1説で学べるのは、アメリカで買い物する時、「For here or to go ?」=店で食べるかテイクアウトするか?とやり取りができるということだけで、その状況でしか使えません。
旅行前にガイドブックを読めば十分で、中学1年生の基礎として必要とは言い難いものです。
1つ使えるフレーズを覚えたなぁという気がしますが、ただの英会話ごっこともいえます。
英語シャワーの幻想
英語習得で「日本語を覚える時のように、とにかく英語のシャワーを浴びる」といわれることもありますが、1日1、2時間程度では、ちょろちょろシャワーを浴びている状態で、量が全く足りていません。
「英語脳を作るには、1日の40%を英語で過ごす事が必要」といわれています。
日本語力を鍛えている学生の時、40%も英語で過ごしたら、日本語力の習得に影響が出ます。社会人なら仕事もあるし、1日の40%も英語で過ごす事は日本にいる限り難しそうです。
”日本語力と英語力”では、日本語話者に合った英語学習を勧めています。
ネイティブのように、英語シャワーで英語習得するのではなく、既に鍛えた(鍛えつつある)日本語力を利用するという方法です。
赤ちゃんのようにゼロから言葉を覚えていくのではなく、既に習得している日本語を生かした方法です。
英語力を身に付けるには、型の訓練が重要
スポーツなら反復練習で基本の型を覚えて、それから技を身に付けます。使える技がたくさんあるほど、自由にプレーができますね。
語学の上達も、同じです。
私もずっと、英語を話せないのは発音が下手なせいだと思っていましたが、英語の勉強を続けるほど基本構文などの型の反復練習が足りていないことを痛感します。
英会話教室の問題点
英会話教室に通うときは、
- 英語を教えられる先生か?
- 英語が話せるだけの先生か?
に注意しましょう。両者はできる事が大きく違います。
自分たちが、日本語の文法を教えられないように、英語を話せるだけで、英語の文法を教えることができません。
「英語が話せるだけの先生」に習ってもよいのは、すでに読み書きを習得していて、英会話教室を仕上げの実践の場として利用する人だけです。
英語の基本の型を身に付けていない人が、「英語を話せるだけの人」に習っても、自己紹介や天気の話が流暢にできるようになるだけで、自由な英語力を身に付ける事は厳しいのです。
早期英語教育:日本語力と英語力はトレードオフか
という話をきいたことは、ありませんか?
アメリカに住む知人も「子供がせめて小学校に入学するまでは、英語を教えない」と言っていました。実際に、どちらもおぼつかなくなった日本人と会った事もあります。会話は出来るけど、小学生レベルの日本語しか分からない大人です。彼は職場で漢字が読めず、不自由な思いをしています。
語学は小さい頃に覚えた方が楽ですが、日本語力を引き換えに失うのであれば、苦労しても後からでよいのでは?と個人的には感じています。

大人になってから習得した人もたくさんいる
日本語も英語も見事なバイリンガルも存在するので、早期教育で必ずしも英語力と日本語力がトレードオフになるとはいえませんが、リスクを考慮し慎重に検討する必要があります。
脱英会話ごっこ
今まで日本人は「読み書きはできても、聞けない話せない」ので英語が出来ませんでした。
現在は、昔と違って音声教材が豊富になりました。インターネットを通じて、いくらでも生の英語を聞くことができますし、安価なアプリもたくさんあります。
私は現在ネイティブキャンプ でオンライン英会話を習っています。月額6,480円でオンラインレッスンが受け放題です。一昔前なら考えられない値段です。
ネイティブキャンプに、まさにこの本でいっているような、千本ノック的学習法のカランメソッドという教材がありました。
1年間NYに住んでも英語を習得できなかった語学オンチの私ですが、カランメソッドで初めて英語が話せる感覚をつかんできました。
カランメソッドは、とにかく質問に答えまくるスパルタ学習法でスポーツのようです。身体に叩き込むのが好きな体育会系の人に向いています。
日本はまだまだ英語学習の迷い子です。’日本語力と英語力’を読んで、カランメソッドこそ日本人に向いている勉強法ではないかと感じました。